木村克己の「サケのカイセキ」vol.1
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 人が酒を飲む理由?そんなこと言ったって、あなた、酒なくて何の人生かなですよ。この言は「今日も元気だタバコがうまい」みたいな一生懸命に生きているフリをしているだけで何とも情ない。そこのところをよく考えてみたいのです。
酒が存在する必然と人の行動原理との関わりを皆で一緒に認識しようと提案したいのです。酒のうまい、まずいを言う前の大切なテーマだと思うからです。どんな酒にも効用があります。
大きく別けて2つの側面が挙げられましょう。
 一つは生理面への効用、もう一つは精神面への効用で、世界中の酒に共通しています。酒を飲むとどうなるか。身体に現れる変化。第一に喉を潤おします。まあ液体ですから当然です。これは特にビール、ワインに顕著です。次に体の運動機能を緩慢にします。
つまり筋肉の緊張を解いてゆったりさせます。反面、体内にエネルギー感が満ちてきます。
 日本酒は最もこの力が強いです。お祭りの日にねワインなんか飲んだら、お神輿かつぐ前に議論が始まってしまうかもしれません。続いて血液の循環が良くなり、血管が拡張してくるのがわかります。胃腸も刺激されます。酒の香りと酸味や炭酸の効果で消化液の分泌も盛んになり、どっと食欲が湧いてきます。酒に含まれた甘味が血中糖度を上げますと腹が減っているのに野生本能がやや抑えられるなど副次的で巧妙な働きが現れます。
 こんなふうにふんわりした体調へと向かうと同時に体内に活性が生じて来ます。言い換えるならば、この現象は太陽の熱エネルギーに似た酒の働きだと言えます。
もう一方の心に対する効用として まず何と言っても楽しくなります。お酒を飲む前であっても酔ったように見える人もたまに居ます。そしてストレスからの解放です。人は心に対する負荷を外部から受けます。酒はこのスイッチをOFFにしてくれます。人はだれでも心に垣根を持っていますが、酒はこの垣根を低くするか全く取り払ってしまいます。
以上の3点から導き出される効果は人同志の会話を促進させる波動を呼ぶ事です。更に経時感覚の遅滞が起こります。体内時計を早まわりさせるのですが、実際には、ゆっくりした気分におちいります。これらは太陽の光エネルギーと同等の働きだと言えましょう。明るさと開放をもたらすのです。
 つまり酒を飲むということは、どんな酒であれ、その酒が生まれた土地に降り注いだ太陽の光と熱エネルギーを穫り入れることに他なりません。これが第一義であります。酒を飲むとは、夜の夜中の日光浴ですし、心と体の内的旅行、ヴォワイヤージュであります。
そして良好な眠りに就いた後、元の出発点に戻って来ます。
酒を飲んで人は生物として生きている幸福を実感し、新たな目的に立ち向っていく活力を得るのではないでしょうか。この様な効果を期待する為の三原則があります。
 一、適時に。
 二、適正な。
 三、適量の酒をいただく
ことが肝要でありましょう。でなければ、ヤケドをしたり、命を落としたりする結果になるのもいやですからね。
続く…。