木村克己の「サケのカイセキ」vol.3
1
2
3
4
5
6
ー私見 酒産業発生の要因となりわいー
酒は何故に在るのか=おいしいからである。これ、短絡。理論の回路がショートしてます。
全ての酒には発生する原因があり、更にそれが産業となるためには、思いもよらない人々に受け入れてもらう為の仕組みが必要だ。今回は世界中のワインが何故に造られているのか、売れているのかを例に挙げ、考察してみようと思う。
一.自然発生説、あるいは因習・伝統的発祥
ワイン(葡萄果実からの酒)は原産を黒海周辺とし、地中海地方で定着したと考えられている。白い大地、コバルトブルーの海洋。これは白亜質、石灰土によるもので、従って、良い飲料水と野菜、ビタミンの慢性的不足を意味し、アフリカ大陸からの熱く乾いた空気が、何の遮りもなく吹いてくる所である。乳製品、魚介、オリーブ、乾きに対しての有効策としてはワインしかなかったと言える。同じく地中海地域の荒野で生まれたキリスト教によって、善行し徳を積み、分かち合い、互いに仲良く平和を保つことにワインを用いて次第にヨーロッパ中へ拡がった。
今日も因習的に造られ、伝統的に飲まれている。
二.他の農産物の代替として生産・開発
日本のワイン産業は明治期の国を挙げての殖産興業と軌を一にする。麻・絹の様式から綿・羊毛への急激な変換。絹市場の中国の参入により、山間盆地、やせ地の桑林がお荷物となる。
そのピンチヒッターとしての葡萄樹。高級フルーツが得られるも長距離の移出は困難である。米も少なく、清酒は賛沢である。ワインを造って、大いに飲もうということになる。軍需品としての使途も別にあり、加糖した甘いワイン、これが結構売れた。
その後、現在の本格的ワイン造りと消費へ継っていくのである。
三.全く新しい産業として起興させる。
いわゆるニューワールドワインなどがこれに当たる。地球上の陸地には至る所に不毛の地がある。北方か、海抜高度的に冷涼な地域を除くと、砂漠の周囲、ゆるやかな山岳部、熱くても風が吹くなど、葡萄樹の栽培が可能な区域があり得る。ここへ半ば国家的プロジェクトとして、周到な調査を行ってワイン産業を興こすのである。
土地の有効利用以上に様々な人々と装置が必要となる。農業用薬剤、肥料、農耕機具、タンク、パイプ、冷却磯、家屋、コンピューターを含むコンビナート群建設。
ガラス製壜、パッケージ、ラベルデザイナー、運輸、鉄道、船舶、税金、その他諸々である。
多方面に渡る産業に潤いが与えられ、オフビンテージ(不作、不出来)のまず無いワインの計画生産と価格付け、プロモーションが可能となる。後はいかに「夢」を創るかである。
有機農法や健全がキーワードだ。
四.個人の趣味に始まり後年事業化移行
アメリカ合衆国、西海岸帯やテキサスなどに、一代で財を成した人がご先祖へのマージュとして邸宅を建て、これまた、源風景としてのワイナリーを造っちゃったりする。金融、不動産、石油、金属、鉱工業、映画、船会社、エレクトロニクスと種は尽きない。
頭初は友達などに自慢したりしていても、そのうちに著名なワイン醸造家をヘッドハンティングして、欲の皮がつっ張って来た処で安らかな眠りについたりすると、後に残された者は、ワイナリーごと売っぱらうか、会社組織にするしかない訳で、諸業無情の物語りが出発進行し、政治家やら観光客やら入り乱れて、勢いがついて止まらなくなって行く。
と、まあ、こんなふうに解析してみましたけど、何と言っても酒は面白いものです。
日本ソムリエスクール東京校長木村克己