桂史戯言vol.3
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今、世の中はワインの波の中にいるみたいで、
波頭でサーフィンみたいに乗り切っている人や、どっぷりワイン沼の中につかっている人、波打ち際で遊んでいる人、波の中でおぼれている人もいるようだ。
その上、元来デザイナーのはずのボクまでもワイン・コーディネーターだったりするので、ひょっとしたら日本人みんなソムリエになってしまってるんじゃないかと思ってしまう。
夜のレストランなんかを、覗いたりするとみんなワイングラスを、くるくるして上海雑技団になってるのも、ちょっと困りものです。でも本物のソムリエは違うんだろうなあと…それで本物のソムリエの話から始めると、
最近日本ワインコーディネーター協会会長の勝山研二さんというちょっと粋な人と食事をしたので、そのエピソードを話すと勝山さんは、以前プリンスのシェフソムリエやっていて勝山風スバラシイ世界を持っているとても楽しい人でやっぱり本物のしゃべることは、説得力があるなあと妙に感心してしまう。その勝山さんが僕に「ハヤシライスという洋食なんぞを食べましょう!」
というので一緒に食べに行こうという話が出来上がって、それもオーナーシェフのMさんも、はまっているという一日七食分しか作らないないという大変なハヤシライスを食べようということになり、期待に胸を膨らませ日本ソムリエ・スクールで待ち合わせて、さあ出掛けようと思ったら、
勝山さんが「あっ…!」「えっ…?」「あっ、今日は洋食屋休みだった!」という展開になり、一瞬気が遠くなってふと気がついたら新橋にある九州風居酒屋の階段を降りる自分になっていて、
あれ?ワインの世界はどこへ…。
後ろを振りむくと勝山さんの笑顔が待っていて、何も云わせないぞという優しさが僕の後頭部を前へ押し出した。あれ?あれ?あっという間に居酒屋の扉は開かれ、のれんなんぞをくぐってしまうと、もうそこはステキな日本酒(熱燗)ゾーンってとこ…。
こっちは今日は、赤でも飲んで、ドミグラスソースを腹にいっぱいっめこめると思っていたのに、めざしのあぶったのに、からし蓮根に、さつま揚げ…。これじゃ冷や酒グイになっちゃうなんて…と思っていたら、最初の一口で人格がコロッと変わって、あらおいし!お酒がヒトの心を創ってしまう一瞬この時ボクにはニッポンがやってきてしまったようです。だいたいワインでも日本酒でも似たようなところがあって…でも余計な講釈の前にうまいものはうまい!
…ワイン全盛のご時世に日本酒のはなしを、するのもなんですが…最近、日本酒のdesignをする機会が、多く…今、熱田神宮の御神酒のdesignをしております。
「熱田神宮のお酒」という立場の御神酒は「おみき」とは云わず「ごしんしゅ」とよびます。熱田神宮というのはNagoyaの街の南に位置し、三種の神器の一つ「草薙の剣」を御神体とする三大神宮のひとつです。元々、この地域では、大きなマチを形成していた場所で熱田の杜という名で東海道五十三次でも知られています。ところで、この御神酒の名称が『草薙(クサナギ)』であることで、Designerとしてのボクにちょっとしたプレッシャーを与えています。
陽気そうな外観の為、ラテン系と思われているボクもこの「クサナギ」っていう名称には、ちょっとした思いがあり、早速神営へ出掛けて、関係資料をいただいてきました。
それによると、『御父第十二代景行天皇から「形は我子なれど実は神人」との絶対の信任をお受けになっていた皇子日本武尊(ヤマトタケル)は、弱冠16才で熊襲を平らげ、続いて蝦夷征伐の大命をうけられた。この時まず伊勢へ赴かれ、御姨倭姫命にいとまごいされたが、倭姫命はこの時神剣と燧嚢(ひうちぶくろ)とを尊に授けられ、「慎みて怠り給うな」とねんごろに諭された。そこで尊は神剣を奉じ、尾張国へ入られた。後、駿河国に至った時、この国の賊らがいつわって、尊を野に誘い火を四方に放って失わんとしたが、尊は燧をもって向い火を点け、神剣の不思議なカで危難を免れ、賊徒をことごとく薙ぎ減ぼされたので、これから神剣を草薙神剣と称するようになった。
(熱田神宮官庁編集並発行「熱田神宮」より)』
と云うわけで、ヤマトタケルは、日本で最初の正義の味方のようなところがあって、昔小さい子供心にも日本の男子の強さと正義の原点のようなイメージを持っていた。その正義というところが大切で、そもそも正しいイメージのお酒ですから、Barに付きものの怪しけなところがあってはいけないものなのです。
じゃ、正義の酒っていうのは何なのでしょう?大体本当は正しくいる為には酒なんぞは飲んではイケナイので、世の中、酒で性格の変わる人が多くて、何かワルイことをしでかしても「酒の上でのことで」とか「酒グセが…jという人が多いことか・・・。全ての人が「悪いのは私じゃござんせん、この酒が悪うございます。」なんていっちゃえばすべてOKのこの国で、そのうえボクの廻りにはちょっと怪しげな人々が多く、正しい酒の飲み方はあっても、正義の酒とは…。ああ、本当に正義っていうのはムズカシイ!!
ところで突然ワンポイント・クリエータ・アドバイス
「毎日が夏休みの1日目だっていうのに!」これは小学生時代、夏休みが始まるその1日目というのは、これから自由な時間が40日間も続くから、「何でも出来る」という気持ちを持ってたと思うのです。その気持ちを、思いだすことがとても大切なんじゃないかな…ということなのです。夏休みの始まりの日は、それまで続いた学校での時間(生活)の中で、ある意味では自分自身と、周りとでつくり出した決まりきったフレームの中で生きていたのがその「枠のある時間」から切り離され、全てが許されるような何でも出来る「自由時間」が今から始まるという・・・そんなワクワクとした瞬間。
 それを毎日心の中に創れるかどうかがとても大事です。私たちは、物事はなかなか進まない!時間が無い!何も出来ない!なんていつも考えがちですが、こんな思いなんかどこかへやってしまえるくらい今、自由な時間がたっぷり持っていることを、自覚しなきゃ、今この瞬間がスタートだと、そして時間と全てが目の前にあり自分のものだという気持ちを、持てることが、
モノやコトを創造していく人には必要だと思うのです。
to be continude...