桂史戯言vol.4
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「デザート下さい!」
酒を飲んでいる場面で、これはちよっとイイナというのがこういうシーンを見た時で……。
 ひとつはバーカウンターでっていうやつで、ボクは酒を飲むというとやっぱりbarのカウンターが頭に浮かぶ、それもカウンターの板がしっかり磨き込まれたモノが良いbarだと思っているからバーントアンバー色でそのカウンターに座ると、頭のてっぺんから足のつま先までその場に溶け込んでしまうような感じがいい。
でもここで大事なコトは、カウンターだけじゃなくて、何を飲むかってコト、誰と飲むか、
そしてグラスは……。
大の男がそんなところでカンパリソーダをロンググラスで飲んでいると、もう見ちゃいられない。
やっぱりロックグラスにスコッチウイスキーがダブルでっていうのか、BACCARATのショットグラスにマッカランなんかが注がれているという風に、何か時の香りが立ち上っているというのが良い。それが香りのないウォッカやジンというのは、こういうシチュエーションではやっぱりちょっと寂しくなってしまう。
香りのしないスピリッツいうのは、カウンターで飲むもんじゃない。のどを通るたびに寂しくなる。湿った空気がどんより押し寄せてくるロンドンの街中のパブでだったら、どれだけジンを飲ていても良いのだけれども……、こういうノイズの少ない酒っていうのは、それなりに雑音の多いところじゃないと、つらいトコロがある。
テキーラやコロナビールなんてノイズの塊みたいな酒は、思いきり乾燥した場所で飲るのがカッコがイイ。もちろんグラスはDURALEXかなんかのチープなやつで、隣には然るべき脚線美の美女がいて。それからもうひとつは飛行機の中でっていうのがある。
 ちょっと前、ボクがBAに乗ってヨーロッパに向かっている時の話、斜め前の席に座っているビジネススーツの男が、座席に座るといきなりスチュワーデスを呼びつけた。
何事かと思ってみていると、「ノーミール」なんでいっている。
「あれっ、ダイエットするにはスリムすぎるな」なんて思っていると、ジャケットを脱いでカーディガンに着替えてやおら本を取り出して読み出した。ちょっとスカした奴だと思っていると、
何かのスコッチオンザロックスを頼んで、飲りだしたんだ。機内食には全く手を出さず、ひたすら本を読み、乾いた頭の中を癒すように、スコッチオンザロックスだけを飲っている男は、夜間飛行の機内でそこだけは次元の違う感じがして、そのうえ光っててオーラを発しているようにも見えた。これが、ビールやワインだったらまるきしカッコがつかない。
(特にトイレが近くなるビールをのむやつはアカン……)やたら出てくる機内食になぜだか必ず手を出してしまうボクにとっては、その時はホントに彼がカッコよく見えた。
何とかその後マネでもしてやろうとするのだが、
スチュワーデスが通りかかると「今日のデザートは何?」なんていっちゃうモンだから、
本当にカッコイイっていうのはムズカシイ。
to be continude...