理事長からのメッセージ

食卓に並んだ食事の食材は、どこでどのように作られているか考えながら食べている人はどのくらいいるでしょうか。私たちの現在の生活環境においては、周囲にコンビニエンスストア、食品スーパーマーケットが数多くあり、食卓の上には均一化された食事が続くという光景が日常化しています。大量生産され、形も大きさも色も揃ったまるで工業製品のような便利で安い食品が私たちのまわりにあたり前のように出回っており、何の疑問も持たずに私たちはそれらを買い、毎日食べているのです。
インスタント食品、冷凍食品等の爆発的な増加によるバランスのとれない食生活が習慣化していますが、そのような食品が市場で成長する理由は、簡単に調理ができるという理由だけでなく、価格がとても安いということがあります。(全てのこれらの食品等が問題であると言いませんが)


おいしい食事は最初口に含んだときに意外と味がしないものです。だからこそ何度食べても飽きないし、食べ続けられるのです。ところがインスタント食品を始めとするジャンクフードには、強烈な味付がしてあり、添加物も多い、それに慣れてしまうと私たちが今まで築いてきた食文化が失われてしまうと思うのです。古来から私たちの祖先は、木になっている実を自分の手で取ったり植物を摘んだりして、それらを触って匂いをかいだり、味見をするといったプロセスを経て自分の身体取り込んでいました。しかし今は、自分の食べているものが何でありどうやってできているか、全てがブラックボックスに入ったまま流通経路に乗って私たちの身体に入ってきているのです。つまり食の工業化であり、これが進みすぎてマスプロダクションになっているのです。その発信源のひとつがコンビニであるといえるでしょう。


便利ではあるが画一的という現在の日本の食卓の風景、誰もがいつも同じものを食べているというのは怖いことです。ジャパンフード運動は、地方の特色ある食材や料理法を見直し、文化の選択肢という豊かさを持とうというのがその主張のひとつです。そのためにも文化の多様性がもたらす暮らしの豊かさをもう一度見直すことが必要なのではないでしょうか。私たちの祖先が培ってきたこの国独自の文化を21世紀につないでいくには今はぎりぎりにところにいるといえます。そのひとつとして、これからは「美味しいものを食べよう」というグルメ志向ではなく「美味しく食べよう」ということを考えたいと思うのです。食べ物に関して前向きなスタンスを取れば、コンビニの食材を使っても「美味しく食べる」ことは可能です。要は楽しんで、食べる意味を考えて食べることができるかということ、これがジャパンフードの第一歩なのです。