理事長からのメッセージ

日本で私たちがこの活動をはじめて約3年になろうとしています。最近になってその反響は驚くべきものがあります。会員数は毎日のように増加し、また新聞、雑誌、テレビやラジオなどのマスコミ取材も数百件を越えており、毎日数多くの問い合わせがあります。会員には、生産者、スーパーマーケット等の販売・流通関係から、企業のオーナー、ホテル関係、料理研究家、ソムリエ、レストランの経営者、主婦、学生と、様々な人が参加しています。私たちが強く感じることは、今のままの「食」と「人間」の在り方に不安や疑問、絶望感といったものを強く感じ、自分自身で行動に移したいと考えているということです。


いま、私たちが口にするものは、そのルーツが分からないものが多くなっています。例えば「白身魚のフライ」がマーケットで売られています。この「白身魚」は、タラなのか、カレイなのかオヒョウなのか、いったいどこでいつ捕れたものなのかも分からないままに食べていることが多いのではないでしょうか。食材の内容や生い立ちも分からないままに食べていると気付いて、皆、危機感をいだいてきているのだと思います。多くの人たちがこの運動に賛同し、参加する理由のひとつには、今、何かを始めないといけないという気持ちが、この「スローフード」という言葉に強くひきつけられているように思えます。ひとつの言葉が多くの人を動かすパワーは、その時代性に大きく影響されているような気がしてならないのです。


日本のあちこちでジャパンフードの話をする中で、多くの人たちに出会うことができました。その中で感じることは、日本には歴史と文化に裏付けされた素晴らしい食べ物がたくさんあるということです。特に、「ジャパンフード」として定義しなくとも、本来持っている日本の食材や調理方法、お酒や調味料、そして食事そのものが「ジャパンフード」であるといえるものばかりなのです。自然が育み、カタチとなった食材がそのまま私たちの食卓に運ばれるのであれば、何の問題もないことでしょう。しかし、現在の食卓では、そのような自然の食材を逆に「ジャパンフード」と言い換えなくてはいけないことに、問題の一端があるような気がしてなりません。今が未来を選ぶ分岐点に立っているように思います。私たちは必ず人間が次に待つ未来を、社会の中で自身が創り直さなければ、決して正しい未来ができてはいかないと思えます。