理事長からのメッセージ

ジャパンフード運動が考える課題のひとつに、子どもたちの食生活という点があります。現代の子どもたちの食生活を考えると、朝食抜きで学校へ行き、昼は給食を食べ、おやつにはコンビニやファストフード、夜は塾や習い事の時間に合わせて個々に食べるといった光景が多く見られます。そこには、自分の好きなものだけを食べるといった個食化への傾倒が見られ、「食べる」ということが大きく変化しているようです。
歴史的に見ると、人類が誕生して家族という単位で生活し始めた遥かな昔から、ごく最近まで食事は家族で食卓を囲んで食べるものでした。現代のように冷凍食品やお総菜、電子レンジなどがなかったため、食事を作るのも手間のかかる仕事でした。子どもたちは調理を手伝うことによって食材に触れ、大人と同じ食べ物を食べて、自然と食習慣が身についていました。例えば、「苦い」とか「辛い」という味覚は、一般的には子どもには受け入れられないものです。それを幾度か口にすることによって、それが「美味しい」と思えるようになるのではないでしょうか。それを教えていたのが、同じ食卓を囲んでいたおじいちゃんおばあちゃんや両親でした。現代では、家族が個々で都合のいい時間に食べることが多くなっているため、「食」を学ぶ機会が減って来ているようです。


そのような現代の食生活で、母親は子どもたちが給食を食べているから、お昼には栄養のバランスがとれていて安心だといいます。しかしながら、学校給食が万能かというと、必ずしもそうとは言えないように思います。学校給食はコストや調理方法が制限させているため、画一的なメニューになりがちです。地方の特色や季節感を出すのは難しいと言えます。また、出来るだけ食べ残すことが少ないようにとか、時間内で全員が食べることが出来るようにと考えると、どうしても『簡単な味』が中心になります。ここでも「苦い」とか「辛い」とか「うまみ」とかいった『むずかしい味』や『やさしい味』を食べることは少ないように思います。


豊かな食文化を持つこの国の「食」を子どもたちが自分たちのものにするためには、もっと「食」に興味を持ってもらうことが必要とジャパンフード運動は考えます。日本全国どこでも同じような味ばかりではなく、自分たちの郷土ではこんな特色ある農作物や海産物がとれ、季節によっても味が違い、土地土地によってもカタチや色の違う作物があると言ったことを実感することが大切であると考えます。また、千差万別の「味」があることを知ることが自分たちの『生活を豊かにする』ということも体験してほしいと考えています。ジャパンフード運動日本では始まったばかりの運動ですが、子どもたちの食を見直すことがこの国の文化を豊かにすることと考えています。